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Home > ソムリエ > 完熟の誤解



● ミニトマトのクレーム
 
 ミニトマトを販売している人からこんなお話を聞いたことがある。


 「夏の時期ですが、どうしても実割れをしてしまって、クレームが多くなるのです」


 トマトは夏が最盛期の野菜。
 お店でも、それなりの品揃えと、量を用意して、その要望に応えている。

 しかし、その反面で、上記のようなことが起こってしまう。


● 真っ赤なミニトマト





 真っ赤に色づくミニトマト。
 その赤さが甘さの象徴であり、完熟にしなければ、美味しくないという考えもある。


 そこで出てくる、完熟という言葉。

 その意味を、どれだけの方が理解しているのだろうか。


● 農産物の世界

 「完熟」と聞いただけで、ほとんどの方が思わず美味しいものだと思ってしまう。

 確かにその考えもあるのだが、
 農産物側から見たときの世界はそれだけではない。


 農産物が完熟したときは、それは「死を意味すること」だ。


● 完熟の意味

 野菜や果物が食べてほしい生物は、人間ではなく、本当は「動物」や「虫」たち。

 完熟になると、外皮を割り、中にある果汁を匂わせて、自分が熟したことを知らせる。
 すると、それを食べに集まった生物が種も一緒に食べて、他の場所で排泄をする。

 そうすることで、自分の子孫を残そうとする。


 つまり、完熟というのは、自分が命を終える瞬間のサイン。
 それと同時に、新しい命へのスタート。


● ミニトマトの作り手から

 ミニトマトを栽培している作り手にこんな話を聞いた。


 「本当に美味しいミニトマトは、畑で実割れしたものだよ。出荷はできないけどね。」


 実割れしたものは、すぐにカビが発生したりして、クレームになる。

 だから、一番のごちそうは、自分の家の食卓に。
 実割れしていないものを出荷という形になる。

 
● クレームの前に

 完熟していながら、割れないものをお届けする。
 その相反する二つの条件をクリアーするのは至難の業。

 だから、クレームを抑えるために、未熟な状況で出荷せざるを得なくなる。

 そんな中で仕事をしているつくり手もいる。


 それが悪いということではなく、食べる側の私達が求めた結果がそこにある。
 実割れしたのは、完熟したか、途中で押されて割れたかはわからない。

 ただ、割れたことを悪とするのではなく、
 そこから物語を伝える方がもっと楽しい食事にはならないだろうか。


 熟するものは、実割れすることは必定。
 それさえも良しとしなければ、本当の美味しさにはめぐり合えないと思うのである。

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