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Home > ソムリエ > 魚屋のおっちゃん



● 夕方に行くと

 休みのときは、夫婦で近所のスーパーで買い物をする。
 そのスーパーの中に魚屋があり、いつも店先に「おっちゃん」がいる。

 このおっちゃん。

 動きを見ていると、とても楽しく、頑張っている姿を、目にすることができる。


● 1割引きでも

 夫婦で買い物をするのは、いつも夕方か夜。
 いわゆる値引きをしている時間帯。

 おっちゃんもエプロンか、手に値引きシールを持って、
 威勢よく、お客さんに声をかけている。


 「奥さん!このエビが1割引になったよ!ものすごく美味しいから、ほら!」


 その威勢の良さに負けてしまうこともあったりするけど、
 おっちゃんは一生懸命に声をかける。


● そんな時

 声かけをしている姿を眺めていると、ある奥さんからこんな要望があった。


 「このお刺身、2割引だけど、3割引きにならない?」


 笑顔のおっちゃんが、一瞬にして、キリっとした顔になった。


 「奥さん、これは美味しいから2割引なの!」


 それは、ちょっときつい口調だった。
 奥さんは、「うーん」とした顔をして、その場を去っていた。


● おっちゃんの覚悟

 たった数分のやり取り。
 その中で、私は「おっちゃんの覚悟」を見た気がした。


 あなたが、値引きされた商品を見るとき、どんな気持ちだろう。

 100円のものが80円になっていたら、「80円の商品」として見てはいないか。

 おっちゃんには、それがたまらなく嫌だったのではないだろうかと。

 
● 胸を張って

 自分の目で見極めて、値段を付ける。
 それは、自分のプライドや経験がはじき出す、「答え」。

 それなのに、値引きをすることで、そのプライドを低く見られてしまう。
 「本当は半額の値段で売れるんでしょ?」と思われることになるからだ。

 だから、おっちゃんは、「1割引」のシールを張ると思いっきり声をかける。


 「奥さん!こんな良い魚が何と1割引!美味しいよ〜!買わなきゃ損!」


 声の限り、魚の良さをアピールする。


● スーパーというの中で

 スーパーでは、「価格絶対主義」の世界。
 「値段が安くなければ、売れない」という考えが蔓延している。


 その中でおっちゃんは、ある意味、戦いを挑んでいると言っていい。

 「良いものはそれなりの品質があり、
 値段が高い」ということを、必死に訴えかけている。


● 作り手も同じ姿

 
美味しいものをより安く求めることは、私自身は不可能だと思っている。

 美味しいものにするには、それだけの手間をかける必要があり、
 手間は、価格に跳ね返ってくるからだ。

 
 「値段を言うのではなく、中身を見て、定価で買ってよ!」


 おっちゃんの言葉が、思わず胸を刺す。
 普通、売り手が言えないことを、思いっきり言う姿勢に、自分は心底共感する。


 言った責任があるから、おっちゃんは自分の腕にかけて、
 魚を選び出していると思うから。


 それは、美味しい農産物を生み出す、作り手も同じ考え。


 こんな心意気を持つ人から買うと、とても気持ちがすっきりする。
 そういう人から、食べ物を購入する機会に恵まれた自分は、幸せになると思う。

 それはプロが選び出した逸品。
 ありがたく、頂ける機会を得た瞬間。


 自分の周りにそんな人がいないかを探し出してほしい。

 よく話を聞いてみると、意外に近くに、
 自分を幸せにしてくれるプロがいるかもしれないから。

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