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Home > であいたび > 卸という仕事がここにある




● 卸はバクチ

「卸」という仕事を聞いて、どんなイメージを持たれているだろうか。

毎日入荷してくれる荷物をセリにかけて、
次々と日本全国の小売店などに出荷する。

そんな感じではないだろうか。

確かに卸は巨大な物量を扱い、それを消費に回す役割を持っている。

有る人がこんな事を言っていた。


「卸は右から左への横流しだよ」


これは嫌味で言った言葉ではない。そういう機能なのだと教えてくれたのだ。

小売店が欲しいものを探し出して、出荷する。
これは当たり前のことかもしれないが、そこで生きていくのは大変な世界がある。


以前卸業者の人と出会って話をしたとき、
「市場とはバクチの世界」と教えて頂いたことがある。

毎日入荷する商品。
それを自分の目で見て、いくらなのかを決めて、セリに臨む。

その時に、自分が思うような値段で買えたり、
さらに思っていたより安い値段で競り落としたときは快感だと言っていた。


「卸の人間は元来バクチ好き。だから毎日ワクワクな仕事さ」


それ自体は悪くはない。
売る側と買う側の利害が一致したところで値段が決められるのだから、
経済社会としては当たり前のこと。

しかし、そのやり方に異を唱える人もいる。


● 値段が安いときこそ、俺の仕事

この人に出会ったのは山形県。
同じように卸の仕事をしている人で年齢は38歳。

29歳まで東京で働いて、都会で働くのはもう十分と思い、
生まれ故郷の山形に帰ってきた人だった。

その人と出会って、こんな卸の人もいるものだなと感心をした出来事があった。


「卸の仕事は値段が安くなったときこそ、
 自分たちの仕事なんだって農家に言ってます」



その言葉を聞いて思わず、身を乗り出した。

普通、卸業者は全国から来た商品を捌く機能をする。
つまり、売った買ったという関係だ。

でもその人はそういう関係ではない。

直接農家と話をして、農産物を栽培してもらい、
その販路を自分で見つけていくやり方をとっていたのだ。



「自分たちは卸だから手数料をもらっています。
 でもそれだけなら、卸の仕事は必要ないと思うのです。
 手数料を取る意味は農家が栽培したものを少しでも高く販売することだと思うのです。
 だからいつも言います。


 市場の値段が下がって、農家の手取りが少なくなったときこそ、
 自分はその値段より安くしないために、
 もっと高く買ってもらうために仕事をしているのだと
」。


熱いものを感じた。

しっかりとした口調で一気に言い切ったその言葉は嘘偽りのない真実のものだった。
そうでなければ、私のココロが動かない。

事実、その人は毎日農家のところへ行き、話しを聞いて、
栽培された商品を引き取り、売り捌いている。

地味かもしれないけど、農家のために市場でいかにして
高く買ってもらうかを必死に相談している。

その行動力には脱帽だった。


「自分が働いている市場の規模は名古屋と比較すれば、
 雲泥の差です。でもやっている仕事には誇りを持っています」



へたのついた小玉スイカ。ブタのしっぽみたいのように残すことで鮮度が保てるそう。自分も初めて見ました。


その言葉が示すとおり、その人の目は真っ直ぐにこちらを見て、
私のココロの中を見通すような目をしていた。


この人もある意味職人なのだ。


いくら頑張っても手数料の割合は同じだけど、
より良いものを栽培してもらって、少しずつ農家の手取りが増えて行けば、
自分の仕事ももっと増えていく。


それが信用に繋がって行く事を既に知っているのだ。


● 卸の仕事って何だろう

有る卸の人は「値段を安くするのが卸しの仕事」と断言していた人もいた。

確かに消費者のためにいかに安くするかを追求するのもいいだろう。
でも、そこには人間の生活がある。

安くするにも限界があるはず。
どこまで安くなればいいのかは誰も分からない。


でも、とにかく安いものを求める市場や消費者。


私は今の考えにちょっとだけ違和感を感じていた。


そんな最中に出会えて、とても清清しい気持ちになった。

農家の収入を増やすのが自分の使命と言い切るあたりが
同じ匂いを感じたからだ。

話を終えて、市場で働いているときの姿をチラッと見たら、
その顔つきは全く別人になっていた。

かなりの責任がそういう顔にさせているのかもしれないが、
とても声をかけようとは思えなかった。


まさに仕事人。


そうでなければ、面白くない。
額に汗をにじませながら、あの日も農家のために
必死で働いている姿を自分に見せてくれた。


ありがとう。


久しぶりに良い仕事を見せてもらったよ。
そう、ココロの中でつぶやきながら、そっとその場を立ち去った。


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